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療育コラム

『見通しをもつこと』 by O.M. 2021年11月19日

 行動の切り替えが苦手な子は、次の行動を促されると癇癪を起したりなかなか今やっている遊びをやめられなかったりします。それは、次の見通しをもつことが苦手で、この後に何が起こるのか、強く不安を感じてしまうからだったりします。では、見通しをもてるようにするにはどうしたらよいでしょうか。

 一つの方法として、物を行動の目安とすることが挙げられます。幼稚園に行くときは黄色い鞄、病院に行くときは電車のイラストが付いた鞄など、場面によって使用する鞄を変えたりします。そうすることで、その鞄を渡されるだけで、行く場所が分かって安心できるようになってきます。見通しをもつということは、何が起こるのかが分かるようになるということです。安心して行動できるように、上手に物を使って見通しのもち方をお子さんと一緒に見つけてみると良いかもしれません。


 

『「アイ(I)メッセージ」で伝えよう』 by M.S. 2021年10月12日

 「なんでいつも、同じ質問ばかりするの!」

 「さっきも言ったばかりでしょう!」

 「何度言ったらわかるの!?」

 「ほんとうに〇〇は!」

 子ども達に何か伝えようと思い熱心になるあまり、ついついこのような言い方になってしまうのかもしれません。

 でも、残念ながら、キツイ言い方をすればするほど、反感を買うだけで、効果はありません。

 「怒鳴らないと人が動いてくれない」そう思い込んでいる人は、とても非効率なことをしているのかもしれません。

 なぜなら人は、恐怖で動かされることを嫌うからです。

 恐怖でコントロールしようとしても反感を買うだけですし、恐怖を与え続けると、どんどん慣れてしまって、さらに強い恐怖が必要になります。恐怖を与えずに楽々相手に動いてもらえたら、それに越したことはありませんよね。

 自分の要求や要望を伝える方法は、2つあります。

 「ユー(YOU)メッセージ」と「アイ(I)メッセージ」です。

 @ ユウ(YOU)メッセージは文字通り「YOU(あなたが)」という風に伝えることです。

 A アイ(I)メッセージとは文字通り「I(私)のメッセージ」という事です。

 「あなた(ユー)は、ゲームやオモチャを使ったら片づけなさい」

 「ユー(YOU)メッセージ」は、ダイレクトに命令をしているように伝わってしまいます。

 命令されると反論したくなります。

 そこで、人に要望や要求を伝えるときは、基本的に「I(アイ)メッセージ」を使うことをお勧めします。

 「私は(アイ)安心できるんだよ。あなたがゲームをしっかり片づけてくれると」

 「私(アイ)を主語にして、メッセージを伝ええることが、アイ(I)メッセージです。

 さきほどの命令形と比べて、どう感じられました。

 この言い方だと、あくまで自分の気持ちや感情を述べているに過ぎません。

 相手を責めることもありません。

 相手にしてみれば、命令されているわけではないので、選択権が残されています。

 そのまま、ゲーム機を放っといてもいいし、片づけてもいいし、相手次第です。

 でも多くの場合、命令されたわけでもないのに、片づけようとします。

 「あなたは〇〇をしなさい」というユーメッセージを言いたくなったら、ちょっと待って

 「私はうれしい」

 「私は助かる」

 「私は安心できる」

 「私は思う」

 という自分の感情やを言い表す「アイ(I)メッセージ」をつけくわえてみて下さい。


 

『メンター相談からペアトレ実施に向けて』 by S.K. 2021年 9月 4日

 厚生労働省HPの「発達障害者および家族等支援事業」の中に「ペアレントプログラム、ペアレントトレーニング、ペアレントメンターについて」(以下、順番にペアプロ、ペアトレ、メンターと略す)という資料が掲載されています。詳細は次のURLにてご確認ください。

https://www.mhlw.go.jp/content/000651034.pdf

 なお、ペアプロは大雑把な解釈ではペアトレの簡易版(入門編)のため、この二つは類似のプログラムと言えます。また、メンターは前述の資料からの引用で、「発達障害の子どもを育てた親の立場から、今悩んでいる渦中の保護者の気持ちを傾聴で寄り添い、それまでの子育ての経験情報を提供する」という活動です。

 ペアプロ/ペアトレに対してメンターは異なるアプローチのため、岩手県の場合は双方を別な支援団体が受託かつ各々で普及活動を行っています。しかし、鳥取県や香川県など他の地域では一括受託または連携することによりメンターへの相談をきっかけ(窓口)にペアプロ/ペアトレの受講へと積極的に繋げる動きも見られます。

 この様な取り組みは「発達障害の家族支援」(中田,2009年)で述べられる「早期発見・早期療育の矛盾」を解消する一案と言えますが、例えば「発達障害のペアレント・トレーニング実践マニュアル」(上林ら,2009年)ではペアトレの対象を、『ことばでの指示が理解できる(ほめられることがわかる)幼児から10歳ぐらいのこども』としています。

 そのため、ペアトレを実施する前段階としては、ある程度のことばの習得やほめられる喜びを教える必要があり、その手法としてもABAによる早期療育は有効な選択肢の一つになると考えられます。


 

『注目することの意味』 by I.M. 2021年 8月 7日

 私たちは子どもの行動に対して、何らかの働きかけをします。望ましい行動や頑張っている姿を見てほめたり励ましたりすることは当たり前です。して欲しくない行動や危険な行為には注意をします。しかし、注意をしているのに、して欲しくない行動の回数が増えたり、エスカレートしたりすることがあります。なぜなのでしょうか?

 子どもにとっては、ほめることも注意をすることも、自分に関心を向けてもらう(注目してもらう)ことになります。望ましい行動をほめれば行動が強化されるように、望ましくない行動への注意により、その行動も強化されることがあります。注意までの一連のやり取りがパターン化されてしまうと、望ましくない行動を消去しにくくなります。その場合は、望ましくない行動には注目しないことが大切です。できれば、望ましくない行動が起こる前の状況を変える方が良いでしょう。そのためには、子どもの行動をよく観察し、どんな状況下で望ましくない行動が起こるのかを把握する必要があります。応用行動分析の考え方は、このような場合にも非常に有効な手立てなのです。


 

『行動の「理由」に注目しよう』by S.Y. 2021年 7月 3日

 先月のコラムは行動の3タイプについて述べました。

 今月は、その行動の「理由」 について考えてみましょう。

 お子様との生活の中で、なんでそんな「意味のない」「困った」行動するの?と感じたことはありますか?

 でも、どんな行動にもその子なりの意味や理由があるのです。

 4つのパターンからみてみましょう。

@<感覚刺激>

 まず、自分だけで感じる感覚や気持ちの刺激による行動です。

 たとえば「ひとりでくるくるまわっていること」などは、周りの人たちからは分かりにくい行動でも、本人が「気持ちいい」と感じて行っているならば、本人にとって意味がある行動なのです。

 次の3つのパターンは周りの人たちとの関わりの中から出てくる気持ちからの行動です。

A<注目の獲得> わたし・ぼくをみて!

 自分をみてほしい、そばに来てほしい、注意をひきたいという気持ちからの行動です。

 「キャー」と大声を出したら大好きな先生がそばに来た。叱られたけど、来てくれた!

 叱っても繰り返す行動の裏には、このような理由があるかもしれません。

B<ものや活動の獲得> ほしい・したい

 「そのおもちゃがほしい」、「アイスが食べたい」といったものを獲得するための行動と、「テレビをみたい」などの活動の獲得を理由とした行動です。

C<逃避・回避> やりたくない

 嫌なことから逃げたい、避けたいといった気持ちからの行動です。

 単純に「やらない」だけではなく、やらなくていいために違う行動をする場合もあります。

 「なぜそのような行動をするのか」と考えることは、その行動への対処法や支援法をみつけていくための大切な鍵となるのです。

 あれ?Bちゃんがお歌の時間なのに床でゴロゴロ転がっているよ。

 どんな理由が考えられるかな?


 

『子どもの行動を3タイプに分けてみよう』by M.M. 2021年 6月 7日

 身の回りのことができるようになる、気持ちや身の回りのことを伝えることができる、いろいろなことに興味関心を持ち取り組める、友だちの輪の中に入って楽しめる等、親は自分の子どもの成長・発達に常に気を配り、時には気疲れしてしまいます。

 子どもの育て方は、学校で修学する訳ではありません。親から受けた育て方を実践したり、身近な人からアドバイスを受けたりして、試行錯誤しているのでしょう。

 子育てが上手く行っていれば問題はないのですが、叱責過多に陥ることもあります。"どうして親の言うことを聞かないの!"、"へそ曲がりな子どもだね"と、ついつい子どもに酷いことを言ったり、手を振り上げてしまったりすることがあります。その後、自責の念を感じますが、なかなかこの親子関係が好転しません。叱責ばかりの子育てが続きます。長期間にわたる叱責だけの子育ては、子どもの心身の成長や親子関係に深刻な悪影響を与えます。

 このような子育ての悩みを解決するヒントとして、ペアレントトレーニングがあります。厚生労働省の「ペアレント・トレーニング実践ガイドブック」(←クリックで外部リンク/2021.5.29.検索)を見ると、ペアレントトレーニングの中核となる要素(コアエレメント)として6つの要素を挙げています。その中の一つ「子どもの行動を3タイプに分る」があります。

 今回は、「子どもの行動を3タイプに分ける」を取り上げます。子どもの3タイプの行動とは、@「好ましい行動」A「好ましくない行動」B「許しがたい行動」です。@〜Bの行動を具体的に書き出します。その後、子どものどんな行動を3タイプに分けたか、チューター共に振り返ります。この振り返りにより、親は、実は「叱る」必要のない行動にまで「叱ったり怒ったり」していたことに気づきます。「叱る」必要があるのは「許しがたい行動」(危険なこと・盗むなど)に限られます。大抵の場合、「好ましくない行動」にまで「叱っている」のです。「好ましくない行動」は、親が関心をを示さない(無視する)ようにします。これだけで、叱責過多の親子関係が好転し、笑顔の絶えない親子関係につながります。


 

『課題の細分化』 by S.E. 2021年 5月 8日

 私たちが日常の指導で目標設定をする際によく使う方法の一つに「課題の細分化」というものがあります。これは、目標とする一つの行動をさらに小さなステップに分け、達成を目指す方法です。

 例えば、「一人でジャンパーのファスナーを閉める」という生活動作の獲得を目標にしたとします。私たち大人にとっては無意識でも行えそうな動作ですが、これを細分化すると以下のようになります。

 @ジャンパーの裾に注目する。

 A両方の裾を引っ張って揃える。

 B金具を持つ。

 C金具を差し込む。

 D差し込んだ手で金具を押さえる。

 E反対の手で引き手を上げる。

 課題を細分化してみると、それぞれのステップが「すでにできているもの」「少し頑張ればできそうなもの」「大人の手伝いが必要なもの」に分けられると思います。もしすべてのステップに手伝いが必要というのであれば、その目標は子どもにとって高いのかもしれません。

 「少し頑張ればできそうなもの」に着目し、そこから取り組んでみます。大人がやって見せる(手本を示す)、手を添えて一緒にやってみる、途中まで大人がやって、残りを任せてみる・・・。子どもの取り組みの様子を見ながら、支援の仕方を調整していきます。一つのステップを達成したら、次にできそうなものに取り組んでみます。

 この手続きを繰り返すことで、徐々に目標とする行動や動作の獲得に近づいていきます。

 家庭でも園でも、新しい行動や動作を身につけようと考えたとき、子どもの取り組みに対する見守りと支援のバランスが大切になってきます。一連の行動を細かくすることにより、どの部分でどのぐらいの支援が必要か、あるいは見守りだけで良いのかが明確になります。

 「ここは一人で頑張ろう」「ここは手伝うよ」「一緒にやってみよう」などと声を掛けながら、少しずつできる部分を増やしいけるといいですね。


 

『アセスメントについて』 by T.A. 2021年 4月 3日

 療育を実践してみる前に必要なことは、療育対象のお子さんの実態把握です。

 この実態把握という言葉は、アセスメント(事前評価または査定という意味)とも言われています。このホームページにおいて、2020年9月15日の療育コラム『指導の進め方について』でも述べていますが、実態把握(以下アセスメントと表記)と療育計画(Plan)、指導(do)、評価(see)がきちんと実行されないと、例えば、養育者の願い(将来的に子どもに身に付けてほしいスキルを教えたい)とお子さん願い(将来的より、現在困っていることを解決できるスキルを身に付けたい)がすれ違ってしまい、結果的に療育の成果があがらない恐れがあります。

 このように療育前のアセスメントは予後を左右しますのでしっかり行います。

 どのような療育を行いたいかによって用いられるアセスメントの種類は異なってきます。

@「フォーマルアセスメント」

・知能検査や発達検査など、評価の妥当性が担保された検査方式のことを指します。この検査の強みは、検査者の技量に左右されず一定の評価が算出できることです。田中ビネー知能検査やWISC発達検査などが知られています。そのほかにもコミュニケーションや理解言語に特化した検査もあります。時間がかかることが課題です。

A「インフォーマルアセスメント」

・「言語・コミュニケーション」など、ある程度の枠組みを決めて行動観察や養育者からのヒアリングを行い、総合的にお子さんの全体像を把握することです。この検査の強みは比較的短時間で実施できることですが、課題としては評価の妥当性について検査者の主観が入る可能性があります。よって複数の目で確認することが必要になります。

 上記の二つを組み合わせてのアセスメント及び養育者とお子さんの願いを盛り込んだ療育計画を立てることが効果的な指導につながります。アセスメントの詳細については、今後の療育コラムにてお話ししたいと思います。


 

『子どもの行動を理解する』 by O.M. 2021年 3月 2日

 問題行動とは、誤った自己表現のことと捉えられると思います。問題行動が見られる背景には、子どもが感じているストレスや何らかの思いが込められています。子どもは何を訴えたいのか考えることが必要です。そして、問題と思われる行動の背景にある子どもの気持ちを受け止め、望ましい姿を考えることが大切です。その上で、その気持ちは環境を整えることで解消できるのかを考えます。例えば、「自分の居場所が分かりにくいから突然走り出す」のであれば、「位置を示し、居場所が分かりやすいようにする」などの対処法が見えてきます。環境を変えることで、子どもが安心するのであれば変えるのがいいでしょう。

 他にも、大人側の対応を考える必要があることもあります。以前のコラムにもありました「プロンプト」も一つの方法です。また、「トークン(ごほうび)システム」を取り入れることもあります。望ましい姿が見られたときに、子どもにあったごほうびを与えながら、分かりやすくしっかり褒めることで、その姿が多く見られるようになってきます。子どもの気持ちをしっかり受け止め望ましい姿に導くために、できる環境作りはどの子どもにも大切な対応であると思います。


 

『「ほめる」とは』 by M.S. 2021年 2月 1日

 トークを円滑にすると言われる「さ・し・す・せ・そ」ってご存じですか?

 「すがですね」「らなかった」「ごいですね」「ンスいいですね」「うなんですね」といったように、相づちをかえしていくとう方法です。

 私たちは、せっかく話したり何かをやりとげたときに気づいてもらえなかったら、話す気にも何かをする気にもなかなかなれませんよね。

 反対に、ほめられた、気づいてもらえていると感じたら、「またやろう」と思えてきます。

 ほめることや注目は、その後の行動の頻度を変えていく影響力をもっているのです。

 肯定的な注目の方法としてほめることを考えていくと、様々なバリエーションがあります。なかでも、その行動に気づいていることを知らせる実況中継的声かは、何をほめられているのかが伝わりやすいのでおすすめです。また年齢が大きくなると、「えらいね」と言われるより、「ありがとう」などと感謝されることを喜ぶようです。

 次に、肯定的な注目やほめ方の具体的な例を探っていきましょう。

 ・【ほめる】 例:「がんばったね」「きれいにできたね」「早いね」「やったね」「さすが!」

 ・【励ます】 例:「もうここまできたの!」「あと少し!」」(終わってからほめるだけでなく、やっている最中に応援する)

 ・【次の活動に誘う】 例:「教室までかけっこしよう!」「3ページを読んでくれる?」

 ・【興味や関心を示す】 例:「何をつくったのかな?」「これは何ていう車?」(子どもの行動を、実況中継のように言葉にする)

 ・【喜ぶ、驚く】 例:「きれいにふいてくれてうれしいな」「もう準備したの?早くてびっくり!」

 ・【ジェスチャー】 例:うなずく、手を振る、拍手「OK」や「グッジョブ」のサイン

 ・【感謝する】 例:「ゴミを拾ってくれたのね。ありがとう」(役に立てたと感じられると、自信が育つ)

 ・【スキンシップ】 例:そっと肩や背中にふれる、握手、ハイタッチ(喜ぶ子どもが多いが、触れられるのが苦手な子どもには、言葉や表情で注目を)

 どんなほめ方を喜ぶかは、子どもによって違います。ほめ方のバリエーションをたくさん知って、いろいろなほめ方を試してください。


 

『プロンプトは何のため?』 by S.K. 2021年 1月 9日

 タイトルを見てコンピュータ用語だと思った方もいるかもしれませんが「プロンプト」はABA療育における重要なアイテムの一つです。直訳すると「促し」ですが、ここでは「子どもの正しい行動を引き出すための手助け」という意味合いになります。一般的にはあまり馴染みのない言葉なので覚えにくい場合は簡単に「ヒント」と理解しても良いと思います。

 例えば、いま私が赤と白のボールを持ってお子さんに「赤はどっち?」と尋ねたとします。親であるあなたは我が子に正答して欲しいので必要以上に赤いボールの方をチラチラと見るでしょう。そしてお子さんは親の様子を伺いながら結果的に正解の赤いボールを選びます。この際の親の視線がプロンプトになります。

 プロンプトには視覚・言語・身体の3があります。例えば視覚プロンプト、親が歯磨きのジェスチャーをして子どもに「あっ、歯磨きしなきゃ!」と気付かせる。言語であれば「朝食の後は何をするのかな?」と質問する。そして、身体はもっと直接的で洗面所に連れて行き歯ブラシ持たせる、など。お子さんのその時の状態に合わせて適切なプロンプトをしてあげることが重要です。そして絶対に忘れていけないのは歯磨きを始めたという行動そのものを褒めることです。

 ところで、プロンプトは何のためにあるのでしょう?色々な答えが考えられますが、その中の一つは子どもをほめる機会を増やすため…だと私は思います。言葉かけ、動作補助、視線、ジェスチャーなど日常の中で「これ、気付くかな?」と遊び感覚で多くのヒントを出してあげてください。そして、それが上手くいった瞬間にはご自身のことも「大成功!やったね!」と最大限に褒めてあげましょう。


 

『分かりやすく示すことの大切さ』 by I.M. 2020年12月 2日

 子どもたちの様子をみていると、言葉で意思表示できないため問題行動になっている場合があります。

 例えば、遊びの中で見かけた場面です。みんなでサインペンを使ってお絵描きをしていました。サインペンは二人で一セット使う約束でしたが、Aさんが一緒に絵を描いていたBさんの手から、いきなり黄色いペンを取りあげました。Bさんは勢いよく取られたため、手に引っ掻き傷ができ泣いてしまいました。Aさんは、Bさんが泣いたので驚いてペンを返しました。「ごめんなさい」と謝り仲直りをしてまたお絵かきを始めました。しかし、Aさんは、Bさんが使っている別な色のペンを再び取ったため、Bさんはまた泣いてしまいました。

 遊びの他の場面でも、Aさんは友だちが使っている物を取ってしまうことが多くありました。「かして」と言えずに要求を通そうとした結果、乱暴な行動になってしまうようでした。トラブルが多いため「ごめんなさい」は言えるのですが、トラブルにならないように、する方法は分からなかったようです。

 Aさんのように、相手と関わる場面で適切な言葉を言えないためにいらいらしたり乱暴な行動をとったりしてしまうお子さんには、状況に合った言葉や言い方を教えてあげることで、相手との関わり方を良い方向へ導くことができます。

 Aさんの場合は保護者と相談し、「かして」と言う練習をしました。最初は学習や遊びで使う物を取りに来る際に「かして」と言ったら渡すというやりとりを繰り返しました。最初は「かして」と書いた紙に、手の平を上にして相手の前に出してしているイラストを一緒に示し、イラストと言葉の真似をするよう促しました。そして、「かして」と言えたらすぐ渡してあげることで、自分の意思が相手にスムーズに伝わる経験を積むことで、促しがなくても言えるようになりました。

 このように、その子にとって分かりやすく示すことで、どのように行動すればうまくいくのか理解し、お子さんの行動が変わってきます。


 

『活動スケジュールって何?』 by S.Y. 2020年11月 2日

 私たちの指導でよく活用している教材の一つに、「活動スケジュール」があります。

 例えば下の画像は、45分位の活動の内容や順番を分かりやすく表記した活動スケジュールです。その日の活動始めにお子さんと一緒に確認し、活動が1つ終了するごとに、その活動の欄にシールをお子さんが貼っていきます。全ての活動が終了すると家に持ち帰ります。

 活動スケジュールの効果はどのようなものがあるでしょう。

 まず、活動の流れの見通しがもちやすくなります。

 「今日は何の活動があるのかな?」 「どういう順番なのかな?」 

 そして、一つ終わるごとに貼っていくシールを見て、どこまで活動してあとどの位で終わるのかという確認だけではなく、「ここまでがんばったよ」 「できたよ」という自分へのご褒美 にもなります。

 この活動スケジュールは、一人ひとりのお子さんのニーズに合わせて準備します。形式は1枚の表にすることもありますし、1つの活動を1枚にしてめくり式ボードにすることもあります。文字だけでなく、イラストや写真を使う場合もあります。年齢が高いお子さんになると、より自主的な活動につなげていくことができるように、自分で活動の内容や順番を選び、記入して作成した活動スケジュールを使用する場合もあります。

 活動スケジュールは、大人になってからも様々な場面で活用できます。筆者はスケジュール管理が苦手で、手帳は必須アイテムです。そこに予定を書き込み、終わったら?したりメモを書き込むことで安心します。振り返りやその後の行動の改善にもつながり、最近では手帳と併せて、携帯にも機能的にも便利なスマホも使っています。


 

『指導の進め方について』 by M.M. 2020年 9月15日

 私たちの指導の特徴の一つは、PDCAあるいはplan-Do-Seeサイクルで進める点です。つまり、実態を把握し、計画を立て、指導を行います。ここまでが1サイクル目ですが、指導の結果が良好なら、次の目標や次の課題に進みます。当初期待した指導の結果が得られない場合は、目標を修正したり教材を修正したりし、子どもの実態に合わせる工夫をします。そして、第2番目の指導のサイクルを開始します。この〔実態把握⇒指導計画の作成⇒指導の実行〕というサイクルを繰り返し、指導を前に進めます。このサイクル1つは米粒1粒のように小さいですが、沢山集まると、大きな力となります。

 この指導の進め方のメリットは、

@子どもの現在の力を出発点にするので、子どもに無理な負担をかけない。

A子どもの現在の力から出発するので、学習・指導を嫌がらない・楽しみにするようになる。

 @とAのメリットは、長期的に見ると、子どもが指導や指導者を信頼し、自ら学習する子どもにつながります。

 第一回目のコラムは、私たちの指導の進め方を話題にしました。


 

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